中長期経営計画策定

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1 中長期経営計画の必要性

前に触れたように5年またはそれを超える計画を長期計画、3年程度の計画を中期計画、翌1年分の計画を予算といいます。毎年毎年しっかりと予算を作成し、それを実行していけば長期的にもうまくいくのではないかと思われる方もあるでしょう。官公庁は単年度計画である予算しか作成していないにも拘らず、何とかなっているではないかという方もいらっしゃるかもしれません。

私どもが言うまでもなく、何とかなっているのではなく、ただ、やり過ごしてきただけです。1,200兆円の政府債務は計画に基づき背負ったものではありませんね。多くの人は何とかなっていないと思っているのではないでしょうか。

行政が中長期財政計画を作り始めたのはごく最近のことです。もともと、10年後、20年後のあるべき国や地方のあり方を考えるのは、私たち国民であり、それを吸い上げる政治の仕事ですし、財政法にも中長期財政計画の考え方はありません。国会による予算決議と単年度予算主義という制度的な制約の中で中長期計画への試行をやっと始めたところですが、国会の構成が変わると長期計画も変えざるを得ませんから、長期計画がないゆえの失敗や不効率は民主主義のコストなのかもしれません。

営利法人や非営利法人の場合も民主主義的な考え方をそのガバナンスに取り入れていますので、役員が変わることによって長期計画を見直されるという点では同じです。ただし、国や自治体のように中長期計画に対する法的制約はありませんので、10年先、20年先にあるべき法人の姿、ありたい法人の姿を目指す計画を策定することができます。

単年度計画である予算自体には、長期目標を内在しませんので、予算管理を数年続けることによって、目標には近づけるかもしれませんが、中長期目標を達成することは困難でしょう。

何を成し遂げたいのか、どんな会社を作りたいのかを経営理念や経営ビジョンで表現し、それを計画の形で具体化したものが長期計画です。この長期計画を実現するために中期計画や予算という形でより具体的に計画化していくことにより、長期目標の達成を現実的なものとすることができます。

2 長期計画

1年や2年で達成できることであれば、長期計画は必要ありません。達成するのに少なくとも5年や10年を要するような困難な目標に挑戦する場合にのみ長期計画は必要になります。

大会社では10年間経営者であり続けることは簡単ではありません。しかし、中小企業や大企業でも同族的な経営を行っている会社ではさして難しい話ではありません。経営者がしっかりとした会社の支配基盤を持つことは、会社が成果を上げていくうえでの必要条件だと思っています。2期4年、3期6年ごとに社長が変わるような会社では社長が会社を変革することは無理ではないでしょうか。

長期計画のない経営は進むべき道がわからないまま、やみくもに歩き続けているに等しく、努力が成果に結びつき難くなってしまいます。

経営環境の変動が激しく不確実性が高い時代に、長期計画を策定することはそれが困難であるばかりでなく、経営環境の予期せぬ変動に対応するためには逆効果だという考え方もあります。

長期計画を策定するということは、10年先、20年先を見据えて、現在の立ち位置を定めることです。安易に変えるべきことではありませんが、長期計画に縛られて、経営環境の変動に対応できないなどということは愚かな判断でしょう。立ち位置を定めなければ、明日の行動さえままなりません。経営環境が大きく変わった時には、長期計画のうち変えるべきでないことと変えて良いことをしっかりと線引きしたうえで柔軟に対応すれば良いことです。

最近、大企業では、かつてほど長期計画が作られなくなり、中期計画が主役となりつつあるようです。このことは経営環境の変動の激しさにより、やむを得ないこととして是認されているようですが、ここにはあやうい問題をはらんでいるのではないかと思っています。むしろ、本当の原因は、官僚化した大規模会社が増加し、代表取締役の任期が短期化するとともに、経営者から長期ビジョンが失われているところにあるのではないかとの仮説をたてています。また、かつて日本企業が外国企業のキャッチアップをしていた時代には、長期計画を立てやすかったという面もあるかもしれません。自ら市場や顧客を作り出さなくてはならない時代にこそ、長期計画により進むべき方向を明確にする必要があるのではないでしょうか。

長期計画はトップダウン型でないとただの作文になりがちです。一身にリスクを負う覚悟のある経営者やオーナーの意思として作成すべきです。

3 中期計画

長期計画を実現するために、3年程度の中期計画を策定します。予算ほど具体的ではありませんが、長期計画よりも具体的な形で作成し、予算と長期計画との間の橋渡しをします。

長期計画もそうですが中期計画もボトムアップ型で作成すると、現状追認型の計画になってしまいます。容易に実現可能な計画を作っておいたほうが楽だからです。

逆にトップダウン型の中期計画は、スタッフから実現不可能な計画とみられると、ただの作文になってしまいます。中期計画は、トップダウン型、ボトムアップ型のいずれかだけではうまく機能しない可能性が高くなります。トップダウン型であれば、スタッフが努力すれば実現可能な計画であると思わせる必要があるし、ボトムダウン型では目標をより高くし長期計画を実現可能なものとするよう説得し、納得させる必要が出てきます。長期計画はトップダウン型で、予算はボトムアップ型となることが多いでしょう。その場合、中期計画は両者の中間的な作り方にならざるを得ません。この中期計画作成のプロセスが計画実現の可否を決めます。これがうまく作成できないと始める前から失敗が見えています。

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