非営利企業の予算管理

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1 非営利企業の予算管理の特徴

1-1 制約条件としての予算

学校法人、公益法人、社会福祉法人、医療法人、NPO法人などの非営利企業は利益獲得を目的としませんので、予算上の損益を超える損益を上げることだけでは十分ではありません。

学校法人、医療法人、NPO法人では黒字になることや予算損益よりも実績損益が上回ることは悪いことではありませんが、収支相償が要請される公益法人では、損益ゼロを予算目標にしますので、黒字になってはむしろまずいことになります。また、社会福祉法人では、内部留保を制限するため、黒字は社会福祉事業等に再投化すべき再投下財産に加算され、再投下計画の対象にしなければなりません。その意味で、大きな黒字は好ましいとは言えません。

非営利企業では、制約条件としての予算を作成します。これは、非営利法人が、法人の種類によって違いはあるものの、多かれ少なかれ法令や定款、経理規程や行政指導により、行政の場合と同じ趣旨の単年度予算主義を強いられていることに起因します。理事会や評議員会で承認された予算の範囲で理事者は予算執行が可能となる形です。

予算は、予算年度の収益予算を目標ではなく予測として作成しますので、その財源をどのような事業にどのような使い方をするかという費用予算のほうが重要になります。財源は短期的には制約があり、大きな増減が見込めない中で、事業の成果である非営利事業の目的を達成すべく支出を行うというという構造です。

ただ、法人の種類別にみると、補助金が法人運営に重要な意味を持つ学校法人、公益法人、社会福祉法人ではこの予算制約は大きく、自主財源を主とする医療法人やNPO法人の予算は制約としての予算だけでは運営は難しく、予算に目標としての機能を持たざるを得ません。そういった意味では、非営利企業といえども、制度的な枠組みを超えた、営利企業の予算管理に近い運用が必要になります。

1-2 予算消化額による管理

非営利企業の場合、一般に年間予算として作成しますが、これを月次予算としても作成する法人は医療法人を除くと多くはありません。例えば学校法人のように1年を単位とする学納金をはじめとする財源で1年間の支出を賄うときに、毎月規則的に費用が発生していくわけではありませんので、月次の費用予算を作成し予算と実績を比較していくといった管理は困難です。このような場合には予算の消化額と未消化額、予算消化率の妥当性を常時把握して予算統制を行うことになります。そのためには、発注や支出の際に未消化額を継続的に管理する体制を作る必要があります。

2 非営利企業の予算管理の運用・見直し

既存の非営利法人の場合、大半の法人ですでに予算制度は導入済みです。しかしながら、うまく予算制度を運用できているかどうかは別問題です。形式的に必要とされているから予算は作成しているが、予算統制を全く行っていないという法人さえあります。

非営利法人の中でも、目標としての予算を作成し管理していかなければならない法人は営利企業の予算管理の諸条件を配慮する必要があります。

制約としての予算を作成し管理することは、それほど困難なことではありません。予算管理がうまくできないとすれば、それは組織運営上の問題を抱えている場合です。発注権限やその承認権限が明確にされていない場合、発注権限や承認権限が分散されているにもかかわらずそれらの担当者に予算管理責任を持たせていない場合などには発注の際に予算制約が考慮されないことになり十分な予算管理を行うことができません。「発注の承認権限」と「予算の管理単位」と「実績の集計単位」を整合させておくことが重要です。

予算制度がうまく運用できていない法人は、専門家のサポートをお受けになることをお薦めします。

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