営利企業の予算管理

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1 営利企業の予算管理の特徴

1-1 経営目標としての予算

予算は単年度の行動計画を会計数値に置き換えたものですが、営利企業と非営利企業の予算管理は全く違いますのでこれを混同してはいけません。

営利企業では、経営目標としての予算を作成します。多くの場合、予算上の損益を超える損益をあげることが目標になります。

言い換えれば、売上実績が売上目標である売上予算を越えること、固定費実績が固定費予算を下回ることが目標になります。売上高の増減に連動して増減する変動原価項目や変動販売費項目は予算を超えているかどうかは問題とされません。売上高が増加すれば当然これらの項目も増加しますから。

結局のところ、通常の場合、損益が予算を超えればまずはOKということです。ただし、同じ増益でも売上拡大による増益とリストラによる増益は長期的には全く違う意味を持ちますので、しっかりと区別しておく必要があります。

1-2 月次目標としての予算

また、営利企業の場合、毎月しっかりとした予算管理を行うため、月次予算を作成します。予算差異に意味を持たせるため、季節的変動や季節的支払はできるだけ月次予算に反映させます。

1-3 利益管理のための予算

つまるところ営利企業の予算は、利益管理のための道具です。利益管理のためには、売上規模が30%増加した時に費用はどれだけ増加し、利益がどれだけ増加するかを知っていなければ、予算をうまく編成することができません。

費用にはある一定範囲の売上規模の間はあまり変化しない固定費と、売上の増減によって比例的に変化する変動費があります。費用を変動費と固定費に分解しておくことで自社の短期的な収益構造を把握できるととともに、利益管理の精度が格段に上がります。

この、固定費と変動費の分解にあたっては、勘定科目に機能的な補助コードを設定しておくことが効果的です。

2 営利企業への予算管理の導入

中小企業においても、予算管理を導入している企業は少なからずありますが、まだ少数派といってよいと思います。

その原因には、大きく二つのハードルがあると思っています。一つは経営者の意識の問題、二つ目は中小企業の経理をささえている社内の経理スタッフや外注先である会計事務所の問題です。

まず、一つ目の経営者の意識の問題です。会計は経営状態を映すもっとも身近な鏡です。経営者は簿記がわからなくても問題はありませんが、決算書を理解できる程度の会計知識は必要です。経営と会計は密接につながっていますので、ここは避けては通れない部分です。ただ、ご心配はいりません。決算書は良い会計顧問がいれば簡単に読めるようになりますから。

決算書が読めるようになれば、将来はどんな決算書にしたいか、そのためには何をすればよいか、というように具体的な計画へのステップをのぼっていくのは簡単です。計画が大事であることは多くの経営者に理解されていますが、その計画を具体的化し、スタッフに共有可能なものに落とし込む作業には会計顧問のサポートが有効です。

次に、二つ目の経理スタッフや会計事務所の問題です。予算制度を運用するためにはしっかりとした社内の経理スタッフが必要ですが、間接部門である経理スタッフの充実は後回しになりがちです。中堅会社や大会社で予算制度を導入している会社でも、うまく運用できていない会社は驚くほど多いのです。かの東芝でさえ、予算制度の運用の問題が粉飾まがいの決算操作を生んでしまったようです。

社内の経理スタッフが不十分な小会社では、会計事務所に多くを依存することになりますが、予算管理を十分に理解していない会計事務所が多いことが、現在の計画性の欠けた中小企業経営という不毛な状況を作り出しています。

良い会計事務所を選択することが問題解決の近道ですが、長い付き合いのある会計事務所を変更することはなかなか難しいことです。既存の会計事務所の業務と重ならないように、2番目の会計事務所とお付き合いしてみてはどうでしょうか。

社内の経理スタッフが不十分な場合には、予算管理をはじめとした経営管理手法の導入にはこれら詳しい専門家のサポートがことさら有効です。

3 営利企業の予算管理の運用・見直し

予算管理は中長期計画と相まった継続的な運用が必要ですので、会社の成長や組織の拡大など経営状況の変化に伴う運用方法の見直しが必要です。また、導入当初から、その機能を十分に生かし切ることも困難です。年々、運用がうまくできるようになることを目指すべきです。

短期間のコンサルティング業務で組織を変えることは難しいということはご理解いただけると思います。予算管理をはじめとした計画性を組織に根付かせるために継続的なサポートをお受けになることをおすすめいたします。

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