1 NPO法人の実態と課題
1-1 NPO法人の実態
NPO法人の数は平成10年の制度施行後年々増加しており、平成27年10月末の認証法人数は全国で50,497法人を数えるまでになっています。この法人数を見るとNPO法人による非営利活動はその社会的貢献度を急激に高めているように見えます。しかしながら、内閣府の「平成26年 特定非営利活動法人に関する実態調査」を見ると、社会的貢献に対する意欲を十分に生かし切れていないとも思えるNPO法人の実態が見えてきます。
- 職員数・・・・・・有給職員数の中央値は5名、常勤有給職員数の中央値は2名
- 給与・・・・・・・・常勤有給職員一人当たり人件費が300万円以下の法人が全体の78.8%、200万円以下の法人が44.1%
- 収益規模・・・・特定非営利活動収益の中央値は1,671万円、年間収入が500万円以下の法人が全体の30.9%
- ボランティア数・・・100人未満の法人が全体の69.5%
1-2 NPO法人の課題
- 資金的にも活動的にも小規模零細事業者が多く、事業規模の拡大を志向している法人が少ない
- この事業規模の小ささが、会費、寄付金、補助金・助成金、事業収入といった財源や人材確保を困難なものとし、事業規模を大きくしようとする計画をも阻む
1-3 NPO法人存続の条件と解決の糸口
- NPO法人といえども、非営利事業を継続していくために必要な財源や人材を確保できなければ、いかに高い志を持っていても、存続することはできません。
- また、貴法人が目的とする非営利活動の社会的貢献度が高く、貴法人の行う非営利活動が広がり、社会的に認知されなければ、財源にしても人材にしても、集まることはありません。目的や活動が社会のニーズにあっているかどうかを常時見直していく必要があります。
- 財源のうち、自主的に最もコントロールしやすいのは、事業収入です。会費や寄付金は非営利活動が社会的に高い評価を受けるようになってこそ増加していくものでしょうし、補助金や助成金は、一定の実績があることが問われるとともに、行政の下請け化をもたらす弊害もあります。無償の活動でなければボランティアではないとか、利益の生じる事業は非営利活動ではないという考え方は間違いです。特定非営利活動の中で利益を出してもいいのです。自ら稼ぎ、事業規模を拡大していくことが非営利活動の規模を大きくしていく近道だと思うのです。
- NPO法人の運営を片手間で行っている方や社会的な貢献度を高めようとしていない経営者は別ですが、NPO法人の運営は企業経営と同様に高度なマネジメントに関する知識や経験が必要なはずです。
2 NPO法人会計、税務の特殊性
2-1 NPO法人会計の基本的性格
NPO法は、市民に対する情報公開を前提に、市民自身がNPO法人を監視することを第一義に定め、所轄庁の監督は最終的な是正手段としています。そのため、NPO法人会計基準は、NPO法人会計基準策定委員会が設定主体となっており、法令として義務化されませんでした。
NPO会計基準は、以下の二つの理念を最上位概念として、小規模な非営利活動法人を想定して設定されています。
- 市民にとってわかりやすい会計報告であること
- 社会の信頼にこたえうるような正確な会計報告であること
2-2 NPO法人会計の特徴
小規模な非営利会計に係る基準としてはスタンダードなものとなっていますが、非営利会計自体が企業会計と大きく性格が異なるため、いくつかの特徴を持つことになります。ただし、学校法人会計や公益法人会計ほどの特殊性はありません。
- 非営利団体は、利益の獲得を目的としませんし、むしろ補助金や寄付金を目的どおり使用することにより収支が均衡する状態が好ましいことになります。したがって、非営利会計では、経営成績を表示することよりも、どういった財源があったか、その財源をどういった目的でどのように使ったかを開示することが求められます。
- そのため、収益や費用の勘定科目を定型化、標準化しています。ただし、公益認定のための基準として設定された公益法人会計基準と違って、行政管理目的のための基準ではないため、公益法人のような厳格さはなく、財務報告の自由度がより高い点で異なっています。
- 「特定非営利活動に係る事業の他に、その他の事業を実施している場合には、活動計算書において当該その他の事業を区分して表示しなければならない」ことになっていますが、特定非営利活動の内訳としての事業別損益については、「事業費は、事業別に区分して注記することができる。その場合収益も事業別に区分して表示することを妨げない」として、事業別の収益や費用の開示を義務付けてはいません。
- その他、NPO法人に特有な事項として、「無償又は著しく低い価格で施設の提供等を受けた場合の取扱い」、「ボランティアによる役務の提供の取扱い」、「使途が制約された寄附金等」などの開示方法が定められています。
2-3 NPO法人税務の特徴
法人税法上、NPO法人はその収益事業から生じた所得のみに課税されます。ここでいう収益事業は、法人税法施行令第5条第1項各号に規定される34種類の事業のことを指し、定款上の収益事業であるかどうかとは関係ありません。ただし、公益法人が実施する公益目的事業に該当するものについては、税法上の34種類の事業に該当していたとしても課税されません。
さらに、消費税計算においても、NPO法人の場合には「特定収入がある場合の仕入控除税額の調整」という厄介な作業が必要になることがあります。
制度上、学校法人や収益事業課税の公益法人と同じ枠組みとなりますが、NPO法人の場合には、小規模であるため事業構造もわかりやすく、法人税計算や消費税計算も厄介な問題が出てくることは稀です。
2-4 NPO法人に関与するということの意味
NPO法人の会計や税務にはそれなりの特殊性がありますが、もともと小規模な法人が多く、会計基準自体も複雑なものではありませんし、基準の適用自体も任意となっています。それゆえ学校法人や公益法人に比べれば、特殊性の度合いは低く、会計や税務に限定すると多くの会計税務の専門家が対応できるものです。
ただ、会計税務を超えてNPO法人の運営に積極的にかかわろうとすると、そこに高いハードルが見えてくることになります。
冒頭の調査を見る限り、全国50,497法人の大半は、経営者もスタッフもそれぞれ自身の生活基盤を別の仕事で維持しつつ、ボランティアとして活動しているものと思われます。そういった活動の社会的貢献度が低いわけではありませんが、事業規模を大きくすることには制約がありますから、寄附金や補助金の受け皿となることは難しいと思うのです。
NPO法人の運営を本業とする経営者やスタッフを擁する法人がもっともっと増えてもよいのではないかと感じています。非営利事業を本業とするのであれば、法人経営に関する専門的な知識や経験のある経営者やスタッフが増えてくるでしょうし、NPO法人自体の収益構造や財務的な基盤を確立させることを重視する経営者も多くなるのではないかと思うのです。
3 税務業務
3-1 税務顧問
NPO法人会計とNPO法人に特有な法人税・消費税の取り扱いのどちらにも習熟している私どもにNPO法人の税務はお任せください。小規模法人から大規模法人まで対応できます。コンサルティング業務やアウトソーシング業務を含むご契約も可能です。
3-2 決算業務
私どもは、貴法人の状況に応じ、貴法人のニーズに合った形で決算業務やそのサポート業務を提供できます。貴法人がおこなった決算処理をチェックする、決算処理の一部又は全部を請け負う、決算処理を管理指導するなどご希望に沿います。
3-3 法人税・住民税・消費税の申告
法人税、法人事業税、法人都道府県民税・市町村民税、消費税等の申告書作成や税務代理を承ります。
3-4 給与関連税務業務
年末調整、法定調書関係の書類作成など人件費に係る税務業務を受託いたします。給与計算とセットでも単独でも受託可能です。
4 アウトソーシング業務
アウトソーシング業務は、グループ会社の「わくわく経理サポート」から、提供させていただきます。
わくわく経理サポートの特徴はこちらをご覧ください。
4-1 記帳代行業務
NPO法人は小規模な法人が多いため、外部の業者に経理を外注することは合理的な選択です。
外注にあたって注意すべき点は予算統制の機能を十分に果たせるような態勢で外注を行うことです。試算表が2か月後にできあがるような状態では予算統制どころではありませんから。この点外注先と十分に調整しておくことが必要です。
私どもは、外注を受ける場合でも、クラウドシステムをおすすめしております。クラウドシステムを良好に運用するとタイムラグなく予算管理を行うことができます。
一般的な記帳代行のご説明はこちらからご覧ください。
4-2 給与計算業務
給与計算、賞与計算、退職金計算と給与明細書作成、給与振込、住民税特別徴収事務、その他給与関連事務の受託をしております。また、給与計算システムの導入支援や指導も承っております。
NPO法人の給与関連業務は、特殊な取扱いはありません。
一般的な給与計算業務の説明はこちらからご覧ください。
4-3 決算書類・財務書類作成業務
決算業務に関わらない場合でも、財務諸表や財産目録等や財務書類の作成を受託しております。お急ぎの場合もお声がけください。
5 コンサルティング業務
5-1 事業収益の拡大
NPO法人の非営利活動は、会費、寄付金、補助金・助成金、事業収益を財源とします。非営利活動の実績が乏しい中で、会員を増やし、寄付金を受け入れることは困難を極めるはずです。
非営利活動の初期には、特定のスポンサーがない限り、事業収益のみでも運営できるような事業モデルや経営計画が必要だと思います。ボランティアのみに依存するモデルは、すぐにその限界がきます。また、無料のボランティアを拒む人は少ないので、その事業の社会的なニーズを見極めることが難しくなってしまいます。公共サービスに限らず無料のサービスは、それに対する需要を見誤らせます。仮に住民票の発行が無料になれば、住民票の発行総数は激増するはずです。そしてその多くはごみとして捨てられる運命です。
事業収益を財源の基礎にしたうえで、会費、寄付金、補助金・助成金などその他の財源で補強するぐらいの計画でないと事業は成立しがたいのではないでしょうか。ところが、多くのNPO法人はボランティアの寄与を当てにして、収益構造を組み立てています。これが、小規模法人だらけのNPO法人の正体だと思います。NPO法人であっても営利企業と同じく事業者です。ただ、営利を目的とするかどうかが違うだけです。
これから、NPO法人を立ち上げようと思ってる方は、事業プランをしっかりと練るべきですし、既存の法人でボランティア依存状態から抜け出したい場合には、しっかりとした事業収益を上げられるよう事業モデルを転換すべきです。
私どもは、より高い社会貢献を求める法人をサポートしていきます。
5-2 認定NPO化
NPO法人がその非営利活動を拡大していこうとする場合、認定NPO法人として認定を受けることが必要でしょう。認定を受けるためには、パブリックサポートテ スト(PST)に適合する必要がありますが、このことは、社会的に一定の公益性を認められるということですから、単に認定を受けられるかどうかの問題を超えて、NPO法人の存在価値を問うテストでもあります。
私どもには、貴法人が認定NPO法人として認定を受けれらるようサポートする用意があります。
5-3 経営計画策定業務
NPO法人といえども、成果を上げるためにはPDCAサイクルを習慣化し、しっかりとした経営計画を作り作業を避けることはできません。この点、営利企業と何ら変わる点はありません。
一般的な営利企業の経営計画策定業務に関する説明をご覧ください。
5-4 非営利事業の成果の測定
営利企業では、事業の成果は会計上の損益として表現することができますが、NPO法人はそもそも利益の獲得を目的としませんので活動計算書の当期正味財産増減額は非営利事業の成果や業績を表しません。
現状大半のNPO法人は非営利事業の成果や業績を十分に把握せず、いわばどんぶり勘定になっているのではないでしょうか。
上述のごとく、NPO会計基準では、非営利事業の成果を表現することができません。そうであれば、NPO法人会計以外の手法で、非営利事業の成果を測定していく必要があります。
保育施設を運営する法人であれば、保育件数、保護者の満足度などが成果の一部を表現しているはずですし、海外への食糧支援団体団体では、支援食事回数や支援ニーズへの対応度などが成果を表現するかもしれません。
例えば保育者一人当たりの運営コストや補助金の金額、利用者満足度1ポイントあたりのコストや補助金、食事回数1件あたりの運営コストや寄附金の金額、管理費率の低減などの指標を用いて目標を設定し、実績を把握することで少なくとも成果の一部を表現できるのではないでしょうか。
事業の成果を測定しこれを向上させていく中で、職員の満足度の向上、補助金や寄付金の増額、社会へのアピールなどが可能となるのではないかと思います。
この成果の測定は公益法人の設立目的や社会的な存在意義にかかわる極めて重要な事項であるにもかかわらず、測定に困難を伴うがゆえに十分に取り入れられていないと感じます。大規模NPO法人であっても、WEB上での成果の表現は事業の説明を超えておらず、年々運営はよりよくなっているのか、社会への貢献度は高くなっているのかをわかりやすく説明できている法人はほとんどないといってよい状況です。
私どもは、かねてよりこの分野に強い興味を持っております。一緒に貴法人の事業成果の評価・測定に取り組んでみませんか。